もしも愛が嘘ならば


口元を上に上げて

優しくわたしを見つめる先生。



「…な、に?」


舌も回らないほどにドキドキが増加する。



『…梓、笑って』



初めて先生に名前で呼ばれて。

安心させるかのように、わたしの手を握るんだ。



――すごく、すごく…。


この時間が

止まればいいと思った。



「意味、わかんないよ…」



繋がった手から。

先生の温もりが嫌なくらいに、伝わるの。


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