もしも愛が嘘ならば
『…おっと。危ねぇ』
それを止めたのは、先生だった。
「…せんせ」
『あーごめんね?今から診察だから、出てってくれる?』
わたしのことは一切見ないで、海堂くんに話しかける先生。
『あ、はい』
彼は、すぐに病室を出て行った。
いつになくメガネをかけている先生は、カッコいいなんてもんじゃない。
反射的にドキドキするほど美しい。
『…お前さ、うざいよ?』
機嫌が悪いのか。
それとも素で怒っているのか。
綺麗な指で、わたしの顎を上に向かせる先生の表情からは、読み取れなかった。