もしも愛が嘘ならば



『…おっと。危ねぇ』


それを止めたのは、先生だった。



「…せんせ」


『あーごめんね?今から診察だから、出てってくれる?』


わたしのことは一切見ないで、海堂くんに話しかける先生。



『あ、はい』


彼は、すぐに病室を出て行った。



いつになくメガネをかけている先生は、カッコいいなんてもんじゃない。


反射的にドキドキするほど美しい。



『…お前さ、うざいよ?』


機嫌が悪いのか。

それとも素で怒っているのか。


綺麗な指で、わたしの顎を上に向かせる先生の表情からは、読み取れなかった。


< 38 / 59 >

この作品をシェア

pagetop