スキトキメイテキス【BL】
「ロウソクは8本と27本だ。絶対に間違えんなよ」
ニヤリとした笑顔が釘を刺してくる。
「間違えませんよ!」
いくらなんでもそんな間違いはしない。
「いいや。お前は案外ぼーっとしてること多いからな。お前のミスは俺のミスなんだ。その辺しっかり頭に入れとけよ」
「分かってます!」
そうやって、僕を揶揄って楽しんでるんだ。
あの俺様パティシエ──水野久史[ミズノヒサシ]は王子の皮を被ったニセモノだ。
ケーキをそっと箱に詰めて、ロウソクを言われた本数分添える。
あとは、予約客が来店するのを待つだけだ。
「いらっしゃいませ──」
夕方のケーキ屋には、続々と人が押し寄せる。
ケーキを見詰める人達はみんな笑顔で、幸せそうで。
そんな幸せを作り出しているのはあの俺様水野で。
何だか複雑な気分になりながら接客をこなしていくのが、ここ数ヵ月続いている僕の日常だったりする。