あの娘
「はぁ、なんだあいつ。…瀬戸さん大丈夫?」

振り返ると、瀬戸さんはやはり泣いていて、そのまま座り込んでしまった。

「瀬戸さんっ?!」

「うっ…うう」

唇を、かみしめ、思いっきり泣きたいはずなのに我慢をしている。


ブレザーを脱いで、瀬戸さんの頭からかぶせる。

「思いっきり泣きなよ。スッキリするまで。俺が泣き顔隠しとくから」

そういうと、瀬戸さんはブレザーを両手で掴み嗚咽を漏らす。


しばらく泣くとスッキリしたのか、ブレザーから真っ赤な鼻を隠しながら潤んだ目で俺をみる。

やばい。それはやばいって。

「ありがとう。枢くんだったんだ。かっこわるいとこ見せちゃったなー。人前で泣くなんて。」

力なくそういうとチャイムがなった。

「わっ…遅刻!」

「そんな泣き顔で授業受けんの?」

瀬戸さんは恥ずかしそうに鼻を隠して困った顔をする。

「このままさぼっちゃお!」

「えぇっ?!」

凄い驚いた表情をしたがすぐにくすくすと笑い、そうだねっ、さぼっちゃお。と言って立ち上がる。

「先生にばれないように早く移動しようぜ!」

そういって先に駆け出すと、瀬戸さんは慌てたように俺のあとをかけていく。


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