禁断の恋


美恵の49日を無事済ませた康弘は、三日間の休みを取り美恵との思い出の場所を巡る一人旅に出掛けた。

季節は晩秋を前に、各地では紅葉が真っ盛りを向かえていた。

康弘が訪れたのは美恵と初めて旅行に行った北陸方面だった。

康弘は晩秋の越前岬の断崖に立ち、美恵の遺影を握りしめながらしばらく一緒に日本海を見つめていた。

そして、美恵の灰の一部を越前岬から日本海へと撒くのだった。

真っ白な灰は陸地から吹いて来る風に乗り、ふわふわと荒波の日本海へと消えて行った。

康弘は心の底から振り絞るような叫び声を出した。

「美恵…」

その叫び声もおりからの風に吹き飛ばされ直ぐに消えてしまったけれど、康弘は心の奥底に溜め込んでいた苦しみをほんの少しだけ吐き出したように感じた。

『美恵、君は先に天国へ行ってしまったけれど、二人は何時も一緒だからね…』

康弘はそう心の中で呟きながら太陽が水平線に沈むまで、美恵と一緒に晩秋の日本海を見つめ続けるのであった…。





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