汚レ唄
♪ピロリロリン♪
机の上に置いた携帯が大きな音を立てて鳴り響いた。
その音で、はっと我に返った。
「……何やってんのよ」
本当に何やってんのよ、私は!!
こんなことをしても、お兄ちゃんはずっとお兄ちゃんのままなのに。
どうかしてた。
1人の夜が怖くて
お兄ちゃんは彼女のところへ行って
裏切られたようでおかしくなってた。
「どうしよう。
………どうしよう」
慌てて、ティッシュで傷口を押さえるが止まる気配がしない。
赤がどんどん白を染めていく。
「どうしよう。
……どうしたらいい?」
誰もいない部屋に呼びかける。
もちろん、返事なんて期待してなかったけど。
赤に染まったティッシュをゴミ箱へと投げ捨てる。
再びティッシュを何枚か抜き取り傷口にあてる。
「たすけてよ。
……だれか……たすけて」
小さく呟いた私の声は雨の音にかき消されていった。
──堕ちていく。
────堕ちていく……。