汚レ唄



「陽菜ちゃんを見てたらわかっちゃった。
“あ~……この子には好きな人がいるんだ”って」




水色の空はいつしかオレンジ色に空を染めつつあった。



「カラオケで歌っていたとき、誰を想って歌ったの?」


「…………」



なんで、

なんでこの人は全部わかってしまうのだろう。


何も言っていないのに、なんで祐君にはわかるの?



何も言えない自分がはがゆい。




「もし、陽菜ちゃんが誰かと会うことで楽になれるなら……僕を呼んでよ。

いつだってすぐに陽菜ちゃんの元に行くから」



夕日が逆光になって祐君の表情を奪っていく……。


「僕じゃダメかな?」


いつの間にかお互いがこぐことをやめたブランコ。



静寂が2人を包み込む。



「僕がいらなくなったら、捨ててくれたって構わない。

僕はただ、陽菜ちゃんの役に立ちたいだけだから」





今まで、空いた穴を埋めるために色んな人と出会った。




< 118 / 665 >

この作品をシェア

pagetop