汚レ唄
「陽菜ちゃんを見てたらわかっちゃった。
“あ~……この子には好きな人がいるんだ”って」
水色の空はいつしかオレンジ色に空を染めつつあった。
「カラオケで歌っていたとき、誰を想って歌ったの?」
「…………」
なんで、
なんでこの人は全部わかってしまうのだろう。
何も言っていないのに、なんで祐君にはわかるの?
何も言えない自分がはがゆい。
「もし、陽菜ちゃんが誰かと会うことで楽になれるなら……僕を呼んでよ。
いつだってすぐに陽菜ちゃんの元に行くから」
夕日が逆光になって祐君の表情を奪っていく……。
「僕じゃダメかな?」
いつの間にかお互いがこぐことをやめたブランコ。
静寂が2人を包み込む。
「僕がいらなくなったら、捨ててくれたって構わない。
僕はただ、陽菜ちゃんの役に立ちたいだけだから」
今まで、空いた穴を埋めるために色んな人と出会った。