汚レ唄
── 幸福論 ──
電話を切ると、フーっと息を吐いてから、クローゼットを開け、服を着替えた。
今のままじゃ、スカートに血がついてるから。
手首に何枚もティッシュを重ね、リストバンドをつけて、長袖の服を着込む。
冬だから、いくら着込んでも誰も不思議には思わないだろう。
着替えてから、そのまま階段を下りて、家を出た。
リビングに再び入る勇気は私にはなかった。
それに、今は早く会いたかったから。
いつ倒れてもおかしくないなら
早くキミの元に駆け寄りたかった。
なんて都合のいい女なんだろうね。
好きな人がいるからってキミを突き放したのに。
心の穴が大きくなったら、キミに寄りかかろうとするなんて。
最低だよね。
ごめんね、祐君。
でも、これで最後だから。
最後になるから、あと少しだけ我慢してくれないかな?
フラフラする足で、手すりがあれば、それにつかまった。
あんまり進んでいないのに、息が切れる。
駅についてから切符を買い、電車に乗り込んで空いてる席に腰を下ろした。
よかった。
まだ人が少ない時間帯で。