汚レ唄
いつもの祐君からは想像できないけれど、少し雑に玄関を開けるキミも、
乱暴に脱ぎ捨てた靴も、
なんだか新鮮に見えるよ。
でも、やっぱりキミは優しいね。
廊下の電気をつけて足元を明るく照らしてくれた。
階段にさしかかると、祐君は先に進み誘導してくれ、私は手すりにつかまって、ハァハァ息切れをしながらゆっくりのぼる。
思わず家に上がってしまったけど、何しに来たんだっけ?
何も考えられなくて、来た意味さえも思い出せなくなっていた。
「適当に座ってて。ジュースもってくるから」
と祐君は出て行ってしまった。
言われるがままに通された部屋は、祐君の部屋なんだろう。
お兄ちゃんの部屋とは全然違う男の子の部屋。
優しい祐君のイメージ通りの部屋。
ハンガーにかけられた制服も、少し埃がかったコンポも、祐君の空気がここには流れていた。
初めて来たのに、なんでこんなに安心するんだろう。
あったかい何かに包み込まれてるような、そんな感じ。
全身の力が抜けて、フワフワフワフワ。