汚レ唄
車全体に流れる曲はTSUBASAの3枚目のアルバム曲だった。
信号で車が止まったとき、お父さんはゴソゴソと何かを探し出し、見覚えのあるジャケット写真の入ったケースを私に手渡してきた。
この3枚目のアルバムは私も持っている。
「実は、この6番目の曲が気に入っててね、ついつい買っちまったんだ」
6番目の曲……
それは『幸福論』という曲名だった。
大好きな人と探した幸せの意味を歌う声。
ポップな曲風に明るい光が差すような透き通る声色。
私も、このアルバム曲の中では1番好きな曲だった。
「いい、曲ですよね」
本当に良い曲。
「お嬢さんもこの曲が好きか??はっはっはー!!!良い子じゃねぇか!!おいっ!また遊びにきなっ!!」
楽しそうに笑うお父さんの言葉で周りの景色見た。
暗くてよくわからないけれど、この辺りは、少し見覚えがある。
前に那智の家に泊まった時、少しだけ案内してくれたところ。
……ということは、もうすぐで那智の家なんだ。