汚レ唄
いつもいつも入っている、那智の部屋。
暖房を入れてくれていて、とってもあったかかった。
「陽菜、寒かったでしょ?お風呂入って来なよ」
少し触れた那智の指先が冷たい。
先に入るのは那智だよ。
「ささっ!!入った入った。服は私のでいい?
……手、首の傷……濡れちゃうね?
あっ!ちょっと待ってて!」
那智は暖まった部屋から飛び出すと、スーパーのビニール袋と輪ゴムを持って勢いよく入ってきた。
「……なにそれ?」
「ん?これはこうするの」
といきなり私の左手を持ち上げると、袋を手にかぶせ、手首の辺りを輪ゴムで止めた。
「これなら包帯濡れることもないでしょ?」
と笑う那智。
「濡れないけど、これじゃ不自由だよ」
つられて私も笑う。
「じゃあ私も一緒に入っちゃおうかな?」
なんて、いつものように笑った那智に恥ずかしいよと私も笑う。
「修学旅行の時、入ったじゃん。背中流してあげるよ」
「いやいやいやいや、それでもやっぱり恥ずかしいから、いいよ」
結局1人で那智の家のお風呂を借りることにした。