汚レ唄
自由の利かない左手。
右手しか使えないままシャワーを浴びて、目の前に広がる鏡に自分の顔が映りこむ。
「……ぎゃっ!!」
見慣れてた鏡の中の私の顔には、頬に、真っ赤で大きな手形をはっきりくっきりとつけていた。
「なんじゃこりゃ!!」
私の美貌が……!!ってこともないけど、この腫れ具合はひどい。
何が1番ひどいかって、手形がついちゃってるし。
あきらかに叩かれましたってわかるし。
明日も学校なのに、明日までには腫れがひくかな??
………………あっ!
だからか。
なんか、気付いちゃったかも。
祐君の家から那智の家まではかなり、遠い。
遠いはずなのに、わざわざ車で送ってくれたのは、この腫れのせいでもあるのかもしれない。
こんな頬真っ赤にした子が電車に乗ってたら、
そりゃ、たくさんの人に見られるだろうし、あることないこと想像してクスクス笑われたかもしれない。