汚レ唄
お風呂から出て、那智に貸してもらった服に袖を通す。
「もう外してもいいよね」
那智につけてもらった即席防水カバー。
でも、さすがに着替えるにはこれはきついから外させてもらおう。
出されたタオルで髪をトントンと乾かす。
長く伸ばした髪に滴り落ちる水滴。
洗面所の鏡で、再び自分の顔を覗き込む。
真っ赤な頬。
濡れた髪。
タオルで髪を拭う。
鏡の中の私も同じように動く。
同じように髪を拭う。
強張った表情。
笑え。
笑え。
……鏡の中の私は薄気味悪くニターっと笑う。
いつもと違う笑顔。
口の端を指で無理矢理、上げる。
ニッター……。
だめだこりゃ。
不自然すぎる。
軽くクシで髪をとかしてから、いつものようにリビングに続くドアをノックしてから開けた。
部屋の中には、那智のお母さんが、コタツに足入れて座ってて
今、視聴率が最も高いと言われているドラマを涙ぐみながら見ていた。