汚レ唄

「いつも元気で、頼もしくて、強かった」


昨日、祐君のお父さんと少し会話をしたけど、まさしく、元気で頼もしくて、強そうな……

今も、祐君の言う過去の話のお父さんも、何も変わっていない気がする。


「だけど、ある日、“会社での人間関係に疲れたんだ”って言って、お酒を飲むようになったんだ」


人間関係?
お酒??



「その日を境に父はお酒を飲み続けた。飲むのをやめる事だってできたはずなのに、父は飲み続けた。
そして、母もそんな父に愛想を尽かしかけていた」



それって、アルコール依存症?


そんな風には見えなかった。


ガハハって大きな笑い声で全てを包んでいくような祐君のお父さんに、そんな姿は似合わない。




「だから俺は思ったよ。“人間堕ちるとこまで堕ちたら上がれない”って」


堕ちたら上がれない。

私も思ってた。



「そんな時、陽菜ちゃんに出会った。
父のようになりたくなくて、人付き合いが怖くて下を向いていた俺をキミが変えてくれたんだ」

「わ、私??」

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