汚レ唄
あさひ……
麻緋。
私の名前。
どうして?
なんで、私の名前を?
もしかして、気付いてたの?
だけど、カレから聞こえるのは静かな寝息だけだった。
気付いていたわけない。
気付いていたら、私なんかを抱くわけない。
分かってるのに、都合の良い事ばっかり考えてしまう自分にうんざりした。
ビデオデッキに示されたデジタル時計を見た。
am2時。
帰らなきゃ。
私の上に覆いかぶさったまま、寝息を立てるカレの脇から抜けだし、そっと床に足をつける。
散らばった服を着て、カレを起こさないようにとそっと布団をかける。
そして、相変わらず、散乱した服をたたみ、カーテンを閉めた。
そして、そのままカバンを持ちカレの部屋を静かに出た。
以前、カレからもらった合鍵で、鍵をかけてから、マンションを出る。