汚レ唄
「ほらほら、TSUBASAぁ〜。
この顔とかすっごい可愛いわぁ〜」
と前から覗き込んでくる岩井ちゃんの小さな指がたまに伸びてくる。
「なにがあったかは知らないけれど、あんたの声は本当にすごいんだから。
誰もが共感するし、色んな人の心を惹きつけるのよ。私だって、あんたの声にやられた1人だし。
だからね、だからこそ、半端に歌うのだけはやめて頂戴ね」
と目を潤ませながら手を握る岩井ちゃん。
“何があったかは知らないけれど”
何があったのかなんて誰にも言えない。
誰にも喜んでもらえない恋をした。
誰にも言えない禁忌を犯した。
今まで、カレへのラブレターのつもりで歌詞を書いてきた。
だけど、今は、どうすれば良いのかわかんない。
カレとどう接すればいいのかわからないし、禁忌を犯して更に想いは大きくなるばっかりで、
……仕事にも身が入らないの。
誰かに相談すれば楽なのかも知れない。
だけど、誰にも相談できない。
ごめんね、岩井ちゃん。
岩井ちゃんほど私たちを応援してくれる人なんていないのに、私はアナタにまで隠してることがあるの。