汚レ唄
彼女は仕事が忙しかったはずなのに、嫌な顔をせずに来てくれた。
そんな優しいところが、やっぱり好きだなって思えた。
少し暗いBARの照明に安心したのか“手に入れたいもの”は深くかぶった帽子に少し大きめのサングラスを外すと、俺の顔色を伺うように近付いてきた。
「オネエサン♪
そんなに変装しなくても、TSUBASAの時はもっと化粧濃いし、……んな、スッピンに近い顔だと誰も気付かないって」
無駄にニターっと笑い、もう一口、お酒を飲む。
お酒を飲みすぎた俺の舌はちゃんと回っていただろうか?
そんなことさえも、もうわからない。
「あ〜。もう、蒼(あおい)。かなり酔ってるでしょ?何言ってるか全然わかんないし」
「ん〜??俺は、TSUBASAよりも麻緋ちゃんの顔の方が好きだよ〜って言ったの」
わかったぁ?っとやっぱり無駄に笑顔を振りまくと麻緋は分かりやすいくらいに、顔を真っ赤にして俯いた。
なんだ、やっぱり聞こえてるんじゃん。