汚レ唄
「ほんと、麻緋はか〜わい〜な」
俯いたままの顔。
人差し指でプニっと頬を突く。
「羽香ちゃんはどうしたの?」
麻緋の一言で、突っついていた人差し指を止める。
「やっぱり、羽香ちゃんと何かあったんだ……」
何でもわかってるといいたげなその顔。
なんか苛めたくなるんだよな。
小さい頃からずっと。
勝ち誇ったような顔も、自慢げな顔も、苛めたくなって、ついつい苛めて泣かせたかった。
可愛げのない男。
「……別れたんだよ。
羽香とは……終わったの」
改めて自分で声に出すと、惨めな気持ちになってきた。
麻緋は、暫く何かを考えてるのか、黙っていると
「蒼が振られるのって初めてじゃない?」
と俺のムカつく顔をした。
勝ち誇ったような……そんな顔。
麻緋の頼んだカクテルが運ばれてくる。
薄い水色の吸い込まれそうなくらい綺麗なカクテル。
「……初めてじゃねーよ」
振られるのは初めてなんかじゃない。
2回目だよ。