汚レ唄
長い長い髪から香る麻緋の香り。
ゆっくりゆっくりその長い髪を指でとかす。
麻緋は目をそらすと、ベッドの下に散乱している昨日俺が着ていた服を見た。
「こっち……見てよ」
俺を見ろよ。
俺だけを見てろ。
両手で麻緋の顔を挟み俺のほうへと顔を向ける。
嫌がって泣けば……きっと、無理矢理にでも抱いてしまえるのに。
麻緋はただ、瞳を閉じて、口を閉じた。
バカ麻緋。
嫌がれよ。
俺とはありえないんだろ?
なんで瞳を閉じるんだよ。
お前がわかんねぇよ。
頬に手を添えて顔を近づける。
触れるだけのキス。
ずっとずっと欲しかったものが、本当に俺のものになる。
その瞬間、今まで築き上げてきたものが崩れ落ちていくような錯覚が起きた。
今のままの関係のほうが俺たちにはいいんじゃないかって。
あんなに欲しかったのに。
いざ、その時がくるとしり込みしてしまう。
すると、何を思ったのか、麻緋の細い腕が背中に回ってきた。
いいのかよ。
とまんなくなるぞ?