汚レ唄
触れるようなキスから、激しいキスを繰り返していく。
今の関係を壊したい。
壊したくない。
その2択が選べなくなった俺は逃げる道を選んだ。
一番ずるい方法。
「……か……わか……羽香。愛してる」
別れた彼女の名をずっと囁く。
お前のことを想いながら、他の女の名前を囁く。
それがどういうことか……。
麻緋を傷つけているのは分かってる。
だけど、俺はずるいから……
だから、今のままの関係であり、かつ、麻緋は俺のことをずっと気にし続けるだろう方法を選んだ。
「…………っ」
脱がした服をベッドの下へと落としていく。
パサっという音がまた興奮を誘う。
絡まりあう舌。
次第に重なり合う吐息。
酒の香りが鼻をかすめる。
ずっとずっと想ってた。
いつだって、どこでだって……
ずっと、ずっと。
麻緋の目からポロリと零れ落ちる涙を見て、無性に悲しくなってきた。
瞳を閉じた瞬間、もしかしたら麻緋も俺のことを想ってるのかもしれないと少し思っていたからだ。