汚レ唄
── 雑誌 《蒼》 ──
『麻緋は俺のことをどう思っているのか?』
俺の頭の中はそれで一杯だった。
今朝、きちんと畳まれた服を見て、無性に心の中が虚しくて寂しくてたまらなかった。
麻緋は嫌々俺に抱かれた?
それとも、気持ちは同じだった?
それが分からなくて、ひたすらモヤモヤとした気持ちが体中を包み込んだ。
「────っ蒼!!」
耳元にコソッと聞こえる元彼女の声。
「……へ?」
思わず、声が聞こえた方へと振り返ると、羽香は目線をあるところに移した。
その視線の先には、指示された長さよりもカットしすぎた髪の束が……。
「っっっっっ!?!?」
「っちょ、ちょっと!!そんなに驚かないで……。お客様が不安になる」
その言葉で、今、髪を切っているお客様の顔を鏡を通して覗き見る。
良いのか悪いのか、彼女は雑誌を熱心に読んでいて、こちらには気付いていないようだった。
「このくらいの長さなら、まだ大丈夫だよ。しっかりしなよ」
羽香はそう言うとタオルを持って、裏へ引っ込んでいった。
その後ろ姿は昨日の後ろ姿とかぶって見えた。