汚レ唄
── ラーメン 《蒼》 ──
「蒼っ!!ラーメン♪」
本日の仕事が終わり、お疲れ様と挨拶を交わした直後に背後から背中を叩かれる。
「ってぇ!!」
「ほら、早くラーメン食べに行こうよ」
「……はいはい」
溜息交じりの返事を気にすることもなく、羽香はカバンを肩に提げて服の裾を引っ張って離そうとしない。
「そんな、引っ張んなくても逃げねぇって」
俺の言葉も聞かずに羽香はまだ引っ張る。
「はぁ……」
仕方なく、俺はカバンを持ち、羽香に引かれながら休憩室から出ることにした。
「今日も2人、仲良いね。これからデート?」
と爽やかな風吹く店長に冷やかされ、
「んな関係じゃないですって」
と否定する間も羽香は引っ張ってくる。
なにをそんなに急いでいるのか……。
「ちょっ!引っ張りすぎだって!!!っお先に失礼します」
と後ろを振り返りながら、ニコニコと手を振っている店長に向かって声をかけた。
「転ばないように気をつけてねぇ」
と子供に注意するような店長の言葉になんだか笑えた。