汚レ唄
無言のままグイグイと引っ張って歩く羽香はどう考えてもいつもの羽香じゃなくて。
何がしたいんだかさっぱりわかんねぇ。
「だ〜!!もうっ」
俺は力をいれて、その場に立ち止まった。
男の力にはかなわねーだろ?
急に引けなくなって軽くバランスを崩した羽香が、怒っているように眉間にシワを寄せてコチラを見る。
「お前なぁ!!話しかけてるのに無視すんなよ」
「急いでんの!!黙ってついてきなさいよ」
「………………」
羽香の勢いに負けた俺はしぶしぶ黙って羽香の後姿を追う。
肩にかかるくらいの髪がヒラヒラと風になびいている。
だけど一向に止まる気配のない羽香が正直わかんなくなった。
何なんだ?!一体。
と、突然羽香の足が止まる。
「ついた!!」
ずっと引っ張られて来た場所が、少し古びた看板文字のラーメン屋。
明るめの黄色いノレンに、様々な色のトッピングがされて長い年月を感じる。
「……お前、ここに来たくてずっと引っ張ってたわけ?」