汚レ唄
ただ、一歩踏み出す勇気が出なくて、明日こそはメールを送ろうとか、
もう少ししてメールが来なかったら送ろうとか……
そうやって先延ばしにしていく自分が嫌で、今日はググっと飲んでしまいたかった。
だから、静の誘いは本当にありがたかった。
岩井ちゃんの運転する車でいつもメンバーと行く居酒屋まで来た。
車を駐車場に止め、スライドさせてドアを開ける。
と、車が行き交うその奥の歩道にいる2人を見て、胸がキュッと締め付けられた。
なんで?
「……蒼?!」
なんであの2人が一緒にいるの?
その2人というのは、今日、ずっとメールを待っていた彼と、彼と付き合っていた女の子。
でも、昨日の話では、彼らは別れたはずだった。
だから、彼は酒におぼれてあたしを抱いた。
……彼女と間違えて。
それなのに、今日、彼らは仲良さげに腕を組んでいる。
彼は、あたしに気付くと気まずそうに目をそらした。
なにがあったの?
まさか、元に戻ったとか?
ザワザワと心の中が騒ぎ始まるのがわかった。