汚レ唄
でも、これでいいんだ。
いいことなんだ。
彼は……蒼は羽香ちゃんのことが大好きだったから。
2人、また付き合うことになったのならいいことじゃないか。
『おめでとう、よかったね』
って、そういってあげるのがベストだと思う。
でも、なんでだろうね。
どんどん視界が潤んでぼやけていく。
「蒼……」
おめでとうっていうべきなのに、唇が震えて、うまく声がだせない。
声が震えているのが自分でもわかる。
かっこ悪い。
「あ、さひ……」
かすかなに消えそうな蒼の声でも、あたしには鮮明に聞こえた。
「あんたたちの知り合いなら、一緒に中はいったら?!」
岩井ちゃんの低いけど無理に出す高めの声で、ぐるぐると回る思考がプツっと切れる。
「そうだな。久しぶりにあいつと飲みてぇし」
と拓斗があたしの肩に腕をまわすと、顔を下から覗き込んで、ニカッと歯を見せて笑った。
「おーーーーーーーーーい!!!蒼っ!!よかったら、一緒に飲まねぇ?!
もちろん、隣の彼女も一緒に!!!!」