汚レ唄
蒼のまっすぐな瞳があたしを捉える。
それだけで、体中が熱くなる。
目が離せなくなる。
蒼はそんなあたしを見て少しだけ微笑んだ、ような気がする。
「今、そっち行きますー!!」
蒼の声が響く。
「いやぁ〜ん、あの子、声も可愛いじゃな〜い♪うちの事務所入らないかしら」
「いやいやいやいや、あいつは無理ですよ。
俺らがバンド組んだとき、あいつにもやらねぇかって誘ったんすけど、音痴だからって断られちゃいましたよ」
「いやぁ〜ん♪そんなところも可愛い」
うっとりとする岩井ちゃんと静の声が聞こえてくる。
会えて嬉しい。
でも『どうして2人でいたのか』って、彼女面してしまいそうで怖かった。
蒼とあんなことをして、それでも今まで通り過ごせる自信なんてなかった。
できることなら、もう2人が一緒にいるところなんて見たくないのに。
それでも、視線は蒼を放さない。
見たくないのに、どうしても視線を外すことなんてできないなんて。
見えない鎖で心を縛られているようだった。