汚レ唄
蒼のことしか考えられなくなるような甘い甘い鎖。
どうしてもほどくことのできない鎖。
ずるいなぁ。
あたしだけこんな気持ちをもたせるなんて。
蒼のくせに。
「蒼のばーか……」
「あん?誰がバカだって?」
「ひぃっ」
青信号になり、こちら側へと走って渡ってきた蒼が、あたしの小さな小さな独り言を聞いて頭を叩かれる。
「……蒼?羽香ちゃんは?」
隣にいるはずの羽香ちゃんがそこにいない。
「さっき別れてきた」
その別れたというのは、付き合いをって意味?
それとも、今日のところはバイバイという意味の別れ??
って、そりゃ後者に決まってるか。
じゃなきゃ、腕なんて組まないよね。
「……いいの?あたしたちと飲んで。羽香ちゃん1人で帰らせて……」
あたしたちの方に来てくれたのに、可愛げのない言い方。
まるで、一緒に帰ったら?って言いたげじゃない。
「いーんじゃねぇ?あいつだって大人なんだし1人で帰れるだろうよ」
と面倒な風に答えると、蒼は拓斗の方へと近付き、子供のように2人じゃれあった。