汚レ唄

── 居酒屋 《蒼》 ──


「おーーーーーーーーーい!!!蒼っ!!よかったら、一緒に飲まねぇ?!もちろん、隣の彼女も一緒に!!」


懐かしい声が向こうから聞こえてくる。





そこには、昔、肩を並べて歩いた友達が……仲間が笑って手を振っていた。



懐かしい顔ぶれ。


麻緋たちが上京してから、4年後、俺が後を追うように上京して、1度飲んだだけで、その後、
麻緋以外に出会ったことがなかった。



本当に懐かしい。


地元にいた頃は、毎日のように顔を合わせていたのに。




懐かしい……。


そして、俺の瞳は大男の中にいる一際小さく見える麻緋を捉えた。


時が止まってしまったように2人の視線が絡み合う。


その麻緋の困ったような顔……。

やっぱいいな。



もっともっと困らせたくなる。





「今、そっち行きますー!!」
と、返事をしてから羽香を見る。


羽香は、瞳をキラキラと輝かせアチラ側を見ていた。

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