汚レ唄

でも、拓斗さんたちの笑った顔を見てたら、なんだか昔に戻ったみたいで嬉しかった。




心が軽くなっていくような気がする。



「蒼のばーか……」

か細い麻緋の声。



だけど、
「あん?誰がバカだって?」

バカってなんでだよ!!


「ひぃっ」

ビクッと肩を震わせる麻緋に鉄拳制裁。




「……蒼?羽香ちゃんは?」

げつこつを落とした頭をさすりながら、唇をとがらせて尋ねてくる。



さっき別れて来たのをこいつは見ていなかったのか?



「さっき別れてきた」

また会えたのに、それでも羽香のことを気にするコイツにイラッとする。



「……いいの?あたしたちと飲んで。羽香ちゃん1人で帰らせて……」


ほら、また羽香の話。

俺と会えて嬉しいとかないのか、コイツは。






……あるわけねぇか。



「いーんじゃねぇ?あいつだって大人なんだし1人で帰れるだろうよ」

と面倒な風に答えると、麻緋は少し俯き眉間にシワを寄せた。


なんなんだよ、その顔は!!



もう1度鉄拳を食らわそうとした時、懐かしい声……。

「蒼っ!!」

「拓斗さん!!」


麻緋の奥には拓斗さんがいた。


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