汚レ唄
── 青い空高く《麻緋》──
「元!!彼女ですよ」
蒼の声が部屋中に響き渡った。
元を強調していても、あたし、見たんだから。
2人が腕組んで歩いてるのを見たんだからね。
2人の周りには私なんかが入れないような2人の世界が出来ていた。
私なんかが入れない空気。
バカみたい。
私なんか相手にされるわけなんてないのに。
そんなの分かってたのに。
何でだろう。
こんなに胸が痛むのは。
私はどこかで期待していた?
夢をみていたのかもしれない。
叶うことなき夢を。
繋がった瞬間、もしかしたら……と。
シンデレラが魔法の解けた後も、王子様との夢のような時間をずっとずっと胸に秘めて、
ガラスの靴の持ち主を探していると話を聞いた後も、
“もしかしたら”王子様が私がシンデレラだと気付いてくれるのかもしれないと……心のどこかで期待したように。
私も、
“もしかしたら”蒼が私に気付いてくれるかもしれないと。
シンデレラのように期待していたのかもしれない。
あの夜のときのことを、もし、蒼が覚えていたなら、今のこの関係はどう変わっているのだろう。