汚レ唄

蒼の言葉を疑って、そんな自分が嫌になって、その繰り返しだった。


それを止めたのは拓斗の無機質な声。




「でもよ〜、元カノから腕を組まれるとか……まだまだ脈ありってことなんじゃね?」

「……は?ちょっと、拓斗さん。何言って」



ドクリ……

心臓の音が更に大きく跳ね上がる。




そうだよ。

羽香ちゃんから腕を組んできたってことは、本当は蒼のことが好きだってことだよね。



両想いじゃない。


……両想い。



蒼は羽香ちゃんのことが好きで、羽香ちゃんも蒼が好き。


それだけのこと。


「そうだよね、まだ蒼のこと好きなんじゃない?よかったね、元サヤ?ってやつじゃん」



……今は心の底から笑っていえないけどさ、


「だから、そういうんじゃないって」



……もし、笑顔であなたと接せられるようになったら、


「わかんないわよ?羽香ちゃんはそういうつもりなのかもしれないし」



……“おめでとう”って


「俺には気持ちないから」


……たった一言だけでも



「昨日の今日で気持ちの切り替えなんてできないでしょ?」


……言えるようになりたいな。



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