汚レ唄
家の電気も消えているような住宅街。
それなのに、俺たちは迷惑を考えず馬鹿笑いした。
2人の声がやたらと響く。
「はははは。……あ〜、蒼?やっぱ、お前には言っておくわ」
「なんすか?」
この時、うっすらと嫌な予感がしたんだ。
拓斗さんの眼差しは麻緋に向けられ、その眼差しは今までに見たことのないくらい優しいものだったから。
「俺さ、麻緋のことが前から好きだったんだよね」
…………。
「そうですか……」
「専門学校で麻緋の歌を聴いた時から、ずっと。
麻緋の声を聞いて一発で一目惚れだった」
俺なんか、物心ついた頃からずっとだ。
小学校のころから……いや、幼稚園に通ってた頃だって……
ずっとずっと麻緋が好きだったんだ。