汚レ唄
だから、俺は今を忠実に生きなければならない。
「よろしくって……バーカ。気が早ぇーよ」
ドンと軽く体当たりをされる。
麻緋をおぶっている俺は、耐えられずによろめいてしまった。
「わ、わりー!!大丈夫か?!」
「はぁ……」
「でも、お前が変な事言うからだぞ?!」
背中に感じる麻緋の温もり。
この温もりを俺は大切にしたい。
とられたくない。
なのに、どうして神様は不公平なんだろうか。
俺の方が好きなのに。
その言葉さえ言えない。
自然に麻緋をおぶる腕に力を入れた。
こんなことで、麻緋が俺だけをみるわけないってわかってんのに。
だけど、この瞬間だけは力強く抱きしめたかったんだ。
俺はいつでもずるい男だから。
だから、寝ぼけた振りをして麻緋を抱いた。
寝ている麻緋を力いっぱい抱きしめた。
何も言わない麻緋を良いことに、俺は自分のために麻緋を抱きしめ麻緋の家へと向かった。
2人の間に流れる沈黙。
この沈黙が更に心を重くさせた。