汚レ唄



しょーもないことでもすぐに泣いていた。


男の癖に泣き虫な蒼が大嫌い。




なにかっていうとお母さんに甘える蒼が大嫌い。



大嫌い。


大嫌いだった。






「麻緋ちゃん?」


蒼が私の顔色を伺うように覗き込んでくる。


「なに?」

「あのね?今日のご飯、から揚げなんだって」

「そうなんだ」

「だからね?いっぱいご飯食べられるように、遊びに行かない?」

「やだ」





「…………お母さぁあああああああああああん!!!!」



ほら、また泣く。


そういうところが嫌なんだって。




いつものパターンなら、ここで豪快な足音を連れて、お母さんが登場する。



「こらぁ!!麻緋!!!蒼と仲良くしろって何回言えばわかるのよ!!」

……こんな風に。



仁王立ちするお母さんの後ろに蒼のニヤリと笑う顔。








あいつは……蒼は、自分でわかってるんだ。


泣けば何でも許されるって。


だから、すぐに泣く。




そして私を悪者にするんだ。
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