汚レ唄
ドスドスドスと豪快な音をたてて、階段を上り麻緋ちゃんのいる部屋へと入るとドーンと仁王立ちをして、手を腰に当てるお母さんは世界で一番強いんだ。
あの麻緋ちゃんだって正座をするほどだ。
「蒼と遊んであげなさい。あんた、お姉ちゃんでしょ?!」
「……好きでお姉ちゃんになったわけじゃないもん」
「それでも、あんたはお姉ちゃんなんだから!!」
「……ん〜!!!!!」
お母さんには誰も適わない。
適いやしないんだ。
「しかたないなぁ。じゃあ、蒼、何する?」
暫くお母さんと麻緋ちゃんがにらみ合い、数分後、麻緋ちゃんが重々しく口を開いた。
「じゃーねぇ、僕、キャッチボールしたい」
「……はぁ?!私、女なのよ?!」
麻緋ちゃんの顔がズイッと近付いてくる。
こ、怖い……。
「麻緋!!!!!」
「ちぇ〜」
お母さんの声は魔法の声。
麻緋ちゃんが遊んでくれる、魔法の声。
「へへへ、いこ!麻緋ちゃん」
麻緋ちゃんの手を握り、グローブを持って外へと出る。