汚レ唄
蒼は私の姿を確認するとドカドカと、自分の教室に入るかのように堂々と乗り込んできた。
「麻緋!!今から帰るんでしょ?俺も今日雨で部活ないし一緒に帰ろうよ♪」
まだ切れている息を整えている蒼の額から汗が首筋に向かい滴り落ちた。
それだけなのに、まわりに群がる女子は、その1滴流れ落ちる汗を惜しむように眺めては小さな溜息をついた。
なんだ、この集団。
「あんた、どんだけ走ってきたわけ?」
「一生懸命?」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
無駄にニコニコ笑う蒼がムカついた。
なんだかバカにされているみたいで。
やっぱり生意気だ。
蒼のくせに。
蒼なのに。
生意気!!
「天誅!!!」
「いてっ」
なんだか無性にムカついたから蒼のスネあたりを軽く蹴ってやった。
ふはは!!
お姉さんはまだまだ強いのよ。
なぁ〜んて。
こんなことでしか、ムカムカを抑えることができない自分が虚しくなった。