汚レ唄
「……なにすんだよ」
蒼は生意気だ。
声だって知らない人の声みたいに急に低くなっちゃって、
背だって、私よりも大きくなっちゃって、
肩だってがっちりしちゃってさ。
スネ毛なんてボーボーに生えちゃって、
俺とか言いだすし、
時々、色気づいて髪にワックスとかつけてるし。
生意気だよ。
蒼のくせに。
蒼の……
「……ばーか」
「はぁ?!」
「なんもない」
バカは私か。
「……まぁいいや。ほら、帰んぞ。麻緋」
蒼は私のカバンを持つとさっさと教室から出て行った。
「蒼と帰るなんて言ってないじゃん!!!!」
って叫んだって、蒼は無視して歩いていく。
「ちょっ!?蒼?!?!」
私は、いつも一緒に帰っている友達に謝って、それから蒼を追いかけて下駄箱へと走った。
下駄箱は1年から3年まで同じ場所を共有している。
ただっ広いスペースに“コの字”を描いて下駄箱が並んでいるのだ。
だから、蒼を見つけるのは簡単だった。