汚レ唄





泣くときには一杯泣いて。

笑いたい時は歯を出して豪快に笑う。



そんなことが出来る蒼が可愛い。


……可愛い??

ちょっと、待って。

私、今、蒼が可愛いって思った??



……キモイ。


私、なに思っちゃってんの?!



キモイキモイキモイって!!!!


蒼が可愛い?!

ないないない!!!!!


私、何を思ってたんだろ。


「どうしたの、麻緋?」

「うわっ!!!」



目の前に蒼のアップ。

ドキドキドキ。



まただ。

また、鼓動が早くなっていく。



落ち着け心臓。


蒼はただの蒼なんだから。


ただの弟なんだから。


ワガママで、甘ったれなんだから。


ドキドキしてどうすんだよ。

蒼にドキドキしてどうする?!


「変な麻緋〜」

変なのは、私?

それとも、急に可愛いことをする蒼?



このドキドキが恋の始まりだと気付いたのは何年もたってからだった。
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