汚レ唄
《蒼》1997【13歳】
「あっ!!あれ、お前の姉ちゃん……だよな?」
ふと、友達の指差す方向に顔を向けると、そこには麻緋が大きな口を開けて笑っていた。
「麻緋だ!!お〜〜〜い!!あさ……」
声をかけようかと思ったけどやめた。
だって、友達と笑い合う麻緋は、俺の知らない麻緋だったから。
なんだか、俺の知っている麻緋じゃない……遠くにいるような、そんな気がしたから。
最近、いつもこんな気になる。
麻緋を見つけては、距離を感じる。
俺と一緒にいる時間との麻緋のギャップを感じては凹む。
そんなことの繰り返し。
「……いいのか?」
声をかけられなかった俺に友達が心配そうに話しかけてきた。
「……んー」
それだけ返事をして俺は、再び机の上に広げられた雑誌に目をやった。
いつからだろう。
俺と麻緋は2人で遊ぶということをしなくなった。
それは多分自然のなりゆき。
お互い、他に遊ぶ相手ができたというだけだろう。
俺と麻緋だけの世界。
そんな世界が続けばいいのにと何度思っただろうか。