汚レ唄
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「ねぇ、あの曲弾いてよ」
毎週木曜日の放課後。
それは雅紀くんがピアノを弾く日だった。
それ以外の日はサッカー部のほうに顔を出しているらしい。
私はというと、毎週木曜日の終礼が終わってから、塾の時間まで音楽室に行くことが多くなった。
「あれは、まだ聴かせられる状態じゃないから」
「途中まででいいから」
あの流れ込むようなメロディ……。
無性に聴きたくなる。
「中途半端に聞いたらさ、なんか不完全燃焼しない?」
「どういうこと?」
「なんていうか……“こんなところで終わりかよ!”みたいなさ。ムズムズしない?
どうせなら、最後まで聴いたほうが余韻に浸れていいと思うよ?」
「……う〜ん?」
「ドラマとかでもさ、よくあるじゃん。“こんな所で終わんなよなぁ〜!!!”ってそんで、予告を見てやっぱり気になる感じ?
出来上がってない曲聴いても、そんな気になると思うんだよね」