汚レ唄
《蒼》1997【13歳】その2
「麻緋は?!」
家に帰るなり、息を切らせて母さんに尋ねる。
「塾よ」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ」
「……あ〜、もう!蒼、うるさい!!お店にまで聞こえるじゃない」
お店っていっても、おしゃれな喫茶店ってわけでもなけりゃ、こじゃれた美容室でもない。
ただ、汗臭いおっさんたちが集う散髪屋。
ただのむさ苦しい散髪屋だった。
「聞こえて困るほど客きてねーって」
「こらっ!!」
俺はそのまま部屋へ戻り、服を着替えた。
いつもは麻緋を塾まで見送って、その近くをブラブラと遊び、そして時間になったら塾の前まで迎えに行く俺の日課が。
部活のせいでめちゃくちゃだ!
「なんてこった!!俺としたことが!!!!」
汗臭く泥まみれになった体をシャワーで超特急で洗い流した。
こんな匂いのまま麻緋を迎えになんて行けない。