汚レ唄
《麻緋》1997【15歳】その3
「麻緋サン卒業おめでとう」
「ありがとう」
今日で最後。
雅紀君とこうして一緒にいれるのも最後。
最後なんだ……。
私は高校生になり、雅紀君は中学の3年生。
離れ離れの学校。
こうして、音楽室で、雅紀くんの弾く曲を聴くのも最後。
「麻緋サンがいなくなると、ここも寂しくなるね」
「そんなこと……」
そんなこと言わないで……。
胸が締め付けられる。
今まで我慢してた涙が……流れ落ちちゃう。
「ねぇ、中学最後の今日。
麻緋サンに聴いてほしい曲があるんだよね」
「?」
雅紀君はピアノに近付くとポー―ン、ポーーーンとピアノを弾き出した。
そして、いつものように深呼吸。
ゆっくりと瞳を閉じ、ゆっくりと瞳を開ける。
その長い指先から巻き起こる軽やかなメロディ。
どこか寂しげに……静かで。
心を深く深く動かすその曲は
「この曲……」
私たちが出会った曲。
私たちを導いてくれた曲だった。
ねぇ、この曲を今日弾くのは反則だよ。
会うのが最後になるかもしれない日に、この曲を弾くなんてさ、本当に最後なんだって思っちゃうじゃん。