汚レ唄
このキラキラ光る綺麗な夕日も、二人の間に流れる繊細なメロディも。
それら全てを絶対に忘れないようにしようって、そう思ったんだ。
「……なんで泣いてんの?」
「え?」
雅紀君が弾きながら笑う。
泣いてんのに笑うってことは、なんで泣いているかわかってるから笑うってことだ。
「キミの弾く曲に感動してるからだよ」
わざとらしく言ってみる。
「やっぱり?俺、天才だからね」
「はいはい」
話さなければいい雰囲気だったのに。
自信過剰。
雅紀君を一言で表すなら自信過剰だった。
ピアノに関しては。
雅紀君のピアノを聴いてから、私はクラシックに興味を持った。
というよりも、ピアノの音に興味が出た。
あんなに綺麗な音楽の世界を始めて知った日、私は塾をサボり、CDショップでクラシック曲のCDを買った。
そして、雅紀君の凄さを知ったんだ。
彼は本当に天才だった。