汚レ唄
「うん。静かに流れるようだと思えば、急に明るく華やかな曲になる」
……。
一番最初に聞いた曲とは少しだけ感じが違う。
「最初はさ、月光みたいな曲にしようと思ってたんだよね」
月光……。
ベートーベンの月光。
キミが弾いてくれた曲だね。
「だけどさ、麻緋サンと出会って、なんだか無性に変えたくなったんだ」
私と出会って?
「この曲は、麻緋サン」
「え?」
「この曲は麻緋サンをイメージして作った曲なんだ。
麻緋サンと初めて会ったあの日、麻緋サンはなんだか静かで、元気なくて……だけど、次第に、本当の麻緋サンと話すたびに、明るくて、太陽みたいに明るい人だと思った」
太陽だと思ってたのは私のほうだよ。
キミが太陽なんだよ。
昔話はサヨナラを言われているようで、なんだか嫌だ。
聞きたくない。
「この曲に名前を付けたいんだけど、麻緋サンの名前使ってもいい?」
「へぇ?」
「この曲は麻緋サンの曲だから……
麻緋サンを思って作った曲だから。
だから、麻緋サンの名前つかいたいんだ」