汚レ唄
コチラを見ずに、雅紀君は夕日を眩しそうに目を細めながら見ながら弾く。
コレは照れ隠しだって、私にだってわかるよ。
ねぇ、雅紀君。
私、単純だからさ。
私の曲を作ってくれて、その曲名に私の名前を使ってくれるってわかったら、嬉しくて……凄く嬉しくて。
さっきまで、サヨナラするのが怖かったけれど、今はこの曲が私を強くさせてくれる。
ピアノを弾き終わると、雅紀君はコチラへと静かに近付いてくる。
その度に、私の目には涙が浮かび上がる。
「……来年、麻緋さんを追っかけてもいいかな?」
「来年?」
「そう。俺が麻緋さんの行く高校に合格できたら……追っかけていってもいい?」
そんなの、返事は決まってるじゃない。
「キモイ?」
「まさか」
「ウザイ?」
「そんなこと絶対ない」
「じゃあ何?なんで、そんな怒ったような顔してんの?嫌だった?」
「そんな顔してないもん」
「してるよ。口をへの字に曲げて、目なんか……目なんか凄く涙で溢れている」
雅紀君はニッコリと八重歯を見せて笑った。
いつもの、いつもの雅紀君の笑顔。
「泣いてなんかないもん」