汚レ唄
「……うん」
「本当に泣いて泣いてないから」
そんなこと、こんな顔をして言っても説得力ないことくらい、自分でもよくわかっていた。
だけど、雅紀君の声はどんな暗闇の中でも一筋の光を射す、そんな安心感のある声だった。
「わかった。追っかけても良い?なんて言っちゃったからキモくてそんな顔になっちゃったんだ」
「ちがっ!!!嬉しかったの!」
変だよね。
自分でも不思議と雅紀君の前だと素直になれるんだから。
「嬉しいの?」
「……嬉しいよ。もう会えないと思っていたから」
「そっかそっか。嬉しかったんだ」
「……連呼するのやめてくんない?」
「真っ赤になっちゃって。いやぁ〜そんな顔されたら照れますなぁ」
「なに言ってんだか」
「とにかく来年だよ。来年、もし俺が麻緋サンの通う高校に入れたとして、もし、また偶然に出会えたとしたら……その時は」
あ……
夕日が雅紀君の髪をオレンジ色に染め上げる。
そして、きっと今凄く顔が赤いんだろうけど、だけど夕日がそれを邪魔する。