汚レ唄
《蒼》1998年【14歳】
「ハハっ」
麻緋の部屋とを区切った薄い薄い壁に背中からもたれかけ、隣から聴こえてくる透き通る歌声に耳を傾けていた。
「本当、素直じゃねーな」
お気に入りの音楽雑誌をめくりながらも集中するのは麻緋の声だった。
心からじんわりと潤っていくよう。
気持ち良い。
どんどん麻緋は音楽にハマっていく。
俺は、どんどん麻緋の歌声にハマっていく。
栗原先輩がいなくなって、その寂しさを埋めるように音楽に入り込んでいく麻緋を見ては、何かしてやりたくなる。
麻緋が喜ぶようなことをしてやりたい。
「……なんかないかなぁ」
ペラペラとめくる音楽雑誌のあるページに目が留まった。
「これだ!!!!!!」
夏休み……
麻緋のために俺ができるプレゼントはコレしかない。
今までコツコツと貯めてきたお年玉貯金を使うときがやってきたんだ。
俺はさっそくある電話番号に電話をかけた。