汚レ唄
《麻緋》1998【16歳】その2
暑い暑い夏休みがやってきた。
終業式も終わり、成績も中の中くらい。
可もなく不可もなく。
欲を言えば、もう少し上に行きたかったけど。
まぁ、とりあえず!!夏休みに入った。
暑い暑い陽射しが照りつける中、弟は今日もお出かけだ。
最近よく出かけている。
コレは多分だけど付き合ってる人がいるんだと思う。
“中峰"
前に、中峰という女の子から電話が来た。
女の子から蒼に電話がかかってきたことは初めてだったし、単純思考かもしれないけれど多分、中峰さんと付き合ってるんだろう。
蒼が女の子と2人で歩いてる姿を想像すると胸が何だかくすぐったくなってくる。
なんだろう、この気持ちは。
ちゃんとデートできてるのかなって心配にもあるし、あの蒼がデート?っていう気持ちにもなる。
不思議な感覚だ。
……今頃、雅紀君はどうしてるんだろう。
4月には帰ってくるって約束したけれど、本当に帰ってきてくれるのかな?
真っ白な八重歯をだして最高の笑顔を思い出して、胸の辺りがほんわかと暖かくなる。
この瞬間が1番好き。
雅紀君のことを考えると自然と笑みが浮かんでくる。
会いたいよ。
雅紀君、会いたい……。
きみの顔を忘れてしまいそうで怖いんだ。
忘れたくないのに。
忘れてしまう前に、少しでいいから会いたい。
会いたいよ。
涙がうっすら浮かんできて、私は壁に立てかけられた黒いギターケースをひっぱりベッドの上に乗せた。
きっと会える。
音楽を続けていればいつかきっと会えるよね?