汚レ唄
図書館に来ると、それだけで、変に達成感があって本当に少ししかできてないのに、それで満足してる自分がいる。
もしかしたら、隣の部屋から聞こえる麻緋の歌声を聴いて机にむかったほうがはかどるかもしれない。
そう思うと、今、この時間が無駄な気がしてきて、小さく溜息をついた。
「……これ、なに?」
中峰の声にふっと現実に戻される。
向かい合って座っていた俺と中峰。
中峰が身を乗り出して、俺の教科書やらノートの間からチラリと見えていた封筒を手にしようとしていた。
「触んなっ!!」
俺の声にビクッと肩を跳ねさせ、俯いた中峰が様子を伺うように上目遣いでこちらをチラリと見てくる。
やべー。
「えっと、ごめん。中峰……。これは、物凄い大事なものなんだ。
だから……」
「私も」
「え?」
「私もゴメン」
中峰は本当にいい子。
それを改めて実感した。
明らかに俺が悪い。
だけど、中峰はそれさえも受け止めて自分も悪かったといってくれる。
俺たちは、向かい合ったまましばらく見つめあった。
そしてしばらくしてから中峰がクスッと笑った。
それを合図に俺も笑った。
「いきなり怒鳴ってごめん。
ビックリしただろ?」
「うん。ちょっとビックリしたけど大丈夫」
「悪かったな」
「そうだ。毎日図書館っていうのも肩凝っちゃうし、たまには息抜きがてらどっか遊びに行かない?」
中峰の眼差しが痛い。
罪悪感。
俺が中峰に思う気持ちは罪悪感しかないのかもしれない。
「遊びに?」
「うん。映画とかショッピングとかちょっと遠出して遊園地とか。暑いしプールでもいいよね」
「そうだな。せっかくの夏休みだし遊びに行ってもいいな」
「じゃあ今日はショッピングとかしてみる?」
「そうだな。いこっか」
俺たちは早々と荷物を片付けると図書館を出て行った。