汚レ唄


「学校が始まるまで、このカバンにつけとく」

「そっか」


というか、ふと思ったわけだけど、ギリギリに言ったほうが麻緋もビックリするし、喜びも倍になるんじゃないかって思ってたけど、
先に麻緋に予定が入るかもしれないわけで。



今、こうして中峰と遊んでいる間にも友達から電話があったりして水曜日、コンサートにいけなくなる。

なんてことも当然ありえるわけだ。




「中峰、ゴメン。急用できたから帰るわ!!」

「え??え?????」


戸惑う中峰を置いてけぼりにしたことは悪いと思うけど、走って家に帰った。


コンサートに行けないなんてことになったら俺の努力も水の泡だ。



とにかく早く麻緋に予定を聴かなければいけない。



家についてただいまと言い放つと乱暴に靴を脱ぎ捨て2階の麻緋の部屋へと向かった。




空いてますように……。





「麻緋!!ちょっといい?」


ドアを開けてからこちらをギターを抱え、呆然と見ている麻緋を捉える。


そういえば、ノックしてなかったかも。


いや、でも今はそんなことどうでもいいや。




「来週の水曜日暇?!」

「……暇だけど?」

「よかったぁ!!!」


だったら一緒にコンサートにいけるじゃん♪


これで麻緋の喜んだ顔が見れる。




ではでは、コホンと偉そうに咳払いをしてカバンの中から封筒をとりだした。




「じゃあ、毎日毎日ギターを頑張っている麻緋ちゃんにプレゼント♪」

「蒼?……そのミサンガ」


って、ミサンガかよ。



「これ?お願い事をこの中に溜め込んだんだ。俺の怨念込みミサンガ(笑)」



そう、俺の怨念付きのミサンガ。

麻緋の幸せを願ったミサンガだった。



封筒の中身を怪訝そうに見ていた麻緋の表情が見る見るうちに一変してキラキラと瞳を輝かせた。



これこれ、俺はこの麻緋の顔が見たかったんだ。




幸せに充ちた顔。

ずっとこんな顔見れてなかったから。


この笑顔の為ならコンサート代くらいちょろいもんだ。



< 455 / 665 >

この作品をシェア

pagetop